抜取可能!3Dプリンターでブレーキハンドルを製作する
CAD鉄道工房が独自に設計したパーツを3Dプリンターで造形し、ツーハンドルタイプの電車の運転台に採用されるブレーキハンドルを再現してみます。当記事の特製パーツは、DMM.makeクリエイターズマーケットにて出品中です!
ブレーキハンドルのモデリング
電車の運転士が操作するハンドルには、力行時に使用するマスコンハンドルと、減速時に使用するブレーキハンドルの2種類があります。通勤電車では古くから、左手でマスコンハンドルを操作し右手でブレーキハンドルを操作するツーハンドルタイプの運転台が採用されてきましたが、最近製造されている鉄道車両では、マスコンとブレーキの操作を1つのレバーで行うワンハンドルマスコンが主流になってきています。 当記事では、ツーハンドルタイプの運転台に使われるブレーキハンドルを、3Dプリンターで製作してみます。実車に使用されるブレーキハンドルには色々な形状のものが存在しますが、ここでは東武鉄道10030系などに採用されている、台座にブレーキハンドルを着脱可能なタイプをモデルにします。製作するブレーキハンドルは、可変抵抗器などの電子部品と組み合わせることで、自作機器の制御などに実用可能な仕様としてみます。
まずはCADソフトでブレーキハンドルのモデリングを行います。 ハンドル軸付近が真鍮製で握りが木製のタイプをモデルにしているので、材質が変わる部分の段差なども表現しています。ハンドル下部には押しばねとコマを組み込める仕様とし、後述のハンドル台座と摺動させます。
ハンドル台座も同様にモデリングします。
ハンドル台座は、実車と同様の位置で着脱操作できるように設計しました。「抜取」位置でブレーキハンドルを軸に取り付け、そこからハンドルを少し左に回した「非常」位置にしてからハンドルを下まで完全に差し込んで使用可能となります。
ブレーキハンドルが取り付けられる部分の真下にはカム機構を設けてあり、ブレーキハンドルの中に入れたコマと摺動する構造となっています。この機構により、ハンドル操作時に常用最大位置と非常位置で引っかかる感覚が得られ、誤って非常ブレーキをかけるなどの誤操作防止に役立ちます。内部に可変抵抗器を組み込むスペースを確保するため、ブレーキ台座下部は太めになっています。
また、このほかに可変抵抗器の軸に取り付けて、ブレーキハンドルが嵌まる部分のパーツもモデリングします。ハンドルを誤った向きに取り付けられないように、2か所の角に緩やかなRをつけた形状とします。
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3Dプリンターで造形したブレーキハンドル
3Dプリンターで造形したブレーキハンドルです。
FDM方式の3Dプリンターで造形した直後のパーツは、表面に凹凸があるので表面をヤスリやサンドペーパーで削ります。特に、他のパーツと干渉する部分は嵌めあいを確認しながら微調整することが重要です。これを怠ると、ハンドル操作時に無理な力がかかる原因となり、破損につながります。
ブレーキハンドルの裏側に押しばねとコマを入れます。
コマの寸法に対し、ブレーキハンドル側の穴の大きさがやや小さくてきつめだったので、コマを削って微調整しました。
ハンドル台座も造形しました。
サポート材を除去し、ブレーキハンドルを組み込む部分やカムの表面などを削って凹凸をなくします。
台座にブレーキハンドルを差し込んで、当たる部分をヤスリで微調整する作業を数回繰り返し、すんなり入るようになりました。
各パーツの表面を平滑化したので、ビン塗料で塗装します。
使用した塗料は、真鍮部にはタミヤカラーの「ゴールドリーフ(X-12)」、木製の握りにはMr.Color「ウッドブラウン(37番)」、ブレーキ台座にはMr.COLOR「グリーンFS34227(312番)」と「シルバー(8番)」を使用しています。ハンドル操作時に、塗膜が円滑動作の支障になり得る干渉部の塗装は一部省略しました。
塗装後、各パーツを組み立てました。
操作してみると、ブレーキハンドルの操作や着脱は問題なく行えます。操作時に、常用最大位置と非常位置で引っかかる感覚もしっかりと得られています。
製作過程についてまとめた動画版がこちら。
このブレーキハンドルを使用した自作運転台で、VVVFインバータに指令を与えて誘導モーターを駆動する動画がこちら
当記事で紹介したブレーキハンドルの改良版(ナイロン造形用)をDMM.makeクリエイターズマーケットにて出品中です。よろしければ電子工作などにご活用ください!
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