VVVF製作所

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カム軸式抵抗制御装置を製作して限流値制御する(高性能版)

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以前に製作したカム軸式抵抗制御装置をベースに改良版を製作し、制御動作をさらに実車に近づけてみます。P1~P3ノッチを区別してノッチ段に応じた動作をする機能を加えることで、運転状況に応じた進段パターンを選択可能な仕様に改良します。

さらに、断流器やマイクロスイッチ類をコンパクトにまとめることで、工作性の向上や艤装スペースの削減を実現します。

従来型カム軸式抵抗制御装置の欠点

従来型の自作カム軸式抵抗制御装置は、土台のベークライト板にカム軸受台座、マイクロスイッチ台座、カムモーター台座、制御基板を取り付けた構成です。そのため部品点数が多く、製作時にも多数のビスや穴加工が必要でした。
従来型カム軸式抵抗制御装置 また、主制御装置の外部に設けた限流継電器ボードと連携動作するため、端子台や配線に必要なスペースを確保する必要がありました。

従来型の機能としては、シンプルにマスコンハンドルからの力行指令を受けたときに限流値と主回路電流を比較してカム軸を回転/停止させることで限流値制御します。マスコンからの指令は「力行指令」または「ノッチオフ」の2段階のみです。

一方実車では力行指令を段階的に設定できる仕様が一般的で、例えば「力行1段」では限流値制御を行わずに全抵抗で起動するだけの動作とし、「力行2段」では直列最終段まで限流値制御、「力行3段」では並列最終段まで限流値制御、「力行4段」では弱め界磁以降まで制御継続、などノッチ指令に応じて異なる動作をします。


改良型カム軸式抵抗制御装置の仕様

5インチゲージ車両でも、入換などの極低速運転を行う際には限流値制御を行わず、全抵抗で起動するだけの動作をさせるほうが扱いやすい場合があるため、改良型では力行指令段数を増やすことにしました。
ただ、力行指令段数を増やすと制御回路が複雑化し部品点数も増加します。5インチゲージ車両に搭載するには限られたスペースに収まるようにコンパクトな艤装が求められるため、省配線化や小型化を実現するには連携動作する基板類は可能な限りまとめるのが理想的です。

従来型では土台のベークライト板を基準に各種部品の台座を取り付けていましたが、改良型では3Dプリンターを活用することで、すべての部品を取り付ける台座を立体的に製作します。これによりカム軸受・マイクロスイッチ台座・カムモーター台座・基板台座などがすべて一体となり、部品点数が大幅に削減できます。 また、部品を立体的に配置することで省スペース化を図ります。たとえば、主カムと制御カムを交互に配置する構造によりカムの全長を短縮しています。


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限流継電器と断流器

従来型では分かれていた限流継電器と断流器を1枚の基板にまとめました。基板上の半固定抵抗器をドライバーで回すことで限流値を調整可能です。
限流継電器・断流器ボード 基板上には走行用バッテリーや主抵抗器、主電動機などの主要機器に配線を接続するための端子台を設けてあります。


カムモーター制御基板

カムモーター制御基板では、カム軸の位置情報やマスコンからの力行指令、限流継電器の条件をもとに、カムモーターの動作/停止を切り替えます。
カムモーター制御基板 従来型のカムモーター制御基板と比べると、動作条件が増えているため回路が少し複雑になりました。動作状態を確認しやすいように制御リレーに連動した赤色LEDを設けることで、運転状態の把握や不具合の早期発見に活かせるようになっています。


カム軸式抵抗制御装置の組み立て

製作した基板やマイクロスイッチなどのパーツ類をメインの枠に取付けます。
カム軸式抵抗制御装置(高性能版) このように立体的かつコンパクトに仕上がっています。ノッチ条件を追加したため電子部品は増加していますが、機械的な部品点数が大幅に減少したため組み立てやすくなりました。
電気配線を基板上のコネクタや端子台に接続することでカム軸式抵抗制御装置の完成です。


マスコンハンドルとの連携動作

完成したカム軸式抵抗制御装置を使用して、実際に電車を制御してみましょう。 マスコンから力行1段の指令が与えられると、カム軸を停止させたまま断流器のみを動作させることで、主回路に電流を流し電車が起動します。

力行2段の指令が与えられると限流値制御を開始し、16段の抵抗ステップのうち8段まで自動進段します。力行3段の指令時には、最終段まで自動進段します。

ノッチオフ時には、断流器を開放しカム軸を自動的に初期位置まで戻します。初期位置までの送り動作中は誤作動防止のため、再力行指令は受け付けません。

カム軸式抵抗制御装置(試作機)による限流値制御の動画はこちら

カム軸式抵抗制御装置(改良版)の製作過程動画はこちら


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