東武10030系の運転台型コントローラを自作してみた
東武10030系の運転台をモデルに、自作のVVVFインバータ装置などと接続して実用可能なコントローラ(ツーハンドル型マスコン)を製作しました。ブレーキハンドルは実車同様に抜取可能な仕様です。以下、製作手順についてご紹介します。
東武10030系の運転台
東武10030系(実車)の運転台はこちら。 運転士は左手でマスコンハンドルを握り、右手でブレーキハンドルを操作します。リニューアル車では乗務員室内の塗色がグレーになり、乗務員が操作する放送装置などの機器が更新されていますが、マスコンとブレーキは未リニューアル車と同様です。 運転台の仕様は10000系に準じていますが、10000系ではマスコンとブレーキの間に配置されるスイッチ類が独立した機器箱に格納されているのに対し、10030系ではマスコン・スイッチ部・ブレーキハンドルの土台が連続した平面となり、すっきりした見た目になっています。
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マスコンハンドルの製作
CADソフトでマスコンハンドルをモデリングします。マスコンハンドルの位置によって「切」,「P1」,「P2」,「P3」の指令を切り替えられる仕様とし、ロータリスイッチに取り付けて使用します。
実車では下り勾配の多い区間に対応するため、ハンドルを力行時と反対側に回すことで抑速ノッチとなりますが、製作するコントローラでは不要なので省略します。ダミーですが、抑速ノッチを入れる際に操作する押しボタンのみ再現してみました。
ロータリスイッチの軸とマスコンハンドルを固定するために、マスコンの中にM3用のナットを組み込みビス止めできるようにしてあります。
FDM式の3Dプリンターで造形したマスコンハンドルがこちら 実用を前提としているため、強度確保のために造形時のフィラメント充填密度を最大にしています。今回は省略しましたが、マスコンのグリップが回転する機構にするとさらにリアルになりそうです。
ブレーキハンドルがこちら 実車同様にカム機構によって常用最大位置と非常位置で「カチッ」と引っかかる感覚が得られ、抜取位置でハンドルを着脱できる構造にしてあります。ブレーキハンドルの製作過程については、こちらの記事をご覧ください。
運転台の製作と塗装
マスコンハンドルやブレーキハンドルを取り付ける台座(運転台)を製作します。それほど複雑な形状ではないうえサイズが大きいため、3Dプリンターではなくタミヤのプラバンとプラ角材を使用することにしました。 上面・側面の部材を切り出し、罫書きしてマスコンや懐中時計置きなどのスペースに穴を開けます。
マスコンとブレーキの間に配置される、懐中時計置きとスイッチ類(ダミー)を再現するため、部品を設計して3Dプリンターで造形しました。 造形した部品の積層痕を消すために、パテを盛ってサンドペーパーで表面をならします。
運転台を構成する部品が揃ったので、各パーツを塗装します。 マスコンハンドルは本体を銀色、グリップをアイボリーに塗装しました。 運転台のベース色は未リニューアル車を再現するため、旧型電車特有の淡い緑色で塗装。 懐中時計置きや合図ブザーも塗装しました。成形色が黒色なので、隠蔽力(下地を透けさせない度合い)が弱い色で塗装する際には、事前に明るい色を塗っておくことが重要です。
運転台の組み立て・配線
いよいよ塗装が完了した部品を運転台に取り付けていきます。 マスコンハンドル、ブレーキハンドル、懐中時計置き、押しボタンスイッチ、合図ブザーを設置して接着剤で固定しました。
最後に配線作業です。 マスコン操作により切り替わるロータリスイッチと、ブレーキハンドルに組み込んだ可変抵抗器に配線を接続し、運転台背面から引き出します。端部に取り付けたコネクタをVVVFインバータに接続すれば、このコントローラで誘導モーターを運転できるようになります。 素材がプラスチックなので、当然ですが半田ごてを使用する際は構成部品を溶かさぬように注意しましょう。
自作運転台をVVVFインバータに接続してモーターを回してみた
製作した運転台をVVVFインバータに接続して誘導モーターを回してみます。VVVFインバータの制御プログラムは、ツーハンドル式運転台の仕様に合わせて一部変更しました。
自作運転台で、VVVFインバータに指令を与えて誘導モーターを駆動する動画がこちら
ブレーキハンドルの製作過程(動画版)がこちら。
この運転台に使用しているブレーキハンドルの改良版(ナイロン造形用)をDMM.makeクリエイターズマーケットにて出品しております。