電車の主回路システム概要と回路構成
電車を駆動するために不可欠な電気システムのうち、主電動機(駆動用モーター)に電力を供給するための回路は「主回路」と呼ばれます。
本ページでは、一般的な電車の主回路システムの構成と、主回路を構成する部品や装置について説明します。また、主回路システムの構成要素の一つ「主制御装置」の種類と制御方式について概説します。
一般的な電車の主回路システム構成
主回路システムは集電装置(パンタグラフ)、主可溶器、主開閉器、高速度遮断器、断流器、逆転器、主制御装置、主電動機、接地スイッチなどから構成されます。ただし、車種や制御方式によって主回路の構成要素は若干異なります。以下、それぞれの構成部品について見ていきましょう。
集電装置
集電装置とは、変電所から架線に供給されている電気を車両に取り込む装置です。多くの電車に採用されているパンタグラフのほか、地下鉄などに見られる第三軌条方式では集電靴と呼ばれる集電装置が用いられます。
これにより車両内に直流1500Vなどの高圧電源が供給され、架線から直接取り込んだ電気は主回路と母線に供給されます。
在来線車両に多く見られるパンタグラフは菱形式、下枠交差式、シングルアーム式の3種類ですが、そのほかにも路面電車に用いられるビューゲル、トロリーポールなど数多くの種類が存在します。
主可溶器
主可溶器とは、パンタグラフから取り入れた主回路電流が過大となった場合に主回路電流を強制的に遮断する役割を担う、保護用のヒューズです。事故電流を防止するための保護機能は他の主回路機器にも組み込まれていますが、それでも対処できない場合には主可溶器が溶断することで主回路を構成する機器や配線を保護します。
主可溶器はパンタグラフのすぐそばに設置されている場合が多いです。
高速度遮断器・断流器
高速度遮断器や断流器は、主回路を開閉するためのスイッチです。高速度遮断器は過電流が流れた場合に動作します。断流器は力行時や回生ブレーキ使用時などに主回路を開閉します。
直流電流を断つためにこれらの接点が開くとき、主回路のインダクタンス成分により元の電流を維持しようとして接点にアークが生じます。アークは接点の荒損や溶着につながるため素早く断ち切る必要があり、高速度遮断器はエアーや電磁石の力で速やかに接点を開くことが可能な構造になっています。
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逆転器
逆転器とは、電車の進行方向を転換する際に動作するスイッチです。動作すると接点が開閉して主電動機に電流を供給する向きが逆転します。逆転器は車両の床下に設けられ、運転台で逆転ハンドルを操作することで切り換わります。
主制御装置
主制御装置とは、主電動機に流れる電流などを制御する装置です。ざっくり言うと、運転士のノッチ指令に応じて車両の加速度を概ね一定に保つように制御します
(厳密にいうと主制御装置が直接的に制御するパラメータは加速度ではなく、制御方式や車両速度によって異なります)。
代表的な制御方式には、抵抗制御、電機子チョッパ制御、VVVFインバータ制御などが存在します。
主電動機
主電動機とは、電車を駆動するためのモーターです。主制御装置から供給される電力により主電動機が回転することで電車は加速します。また、回生ブレーキや発電ブレーキを使用する際には発電機として動作し、運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。
主電動機の種類は、直流電動機と交流電動機に大別され、直流電動機には巻線の構成が異なる直巻電動機、分巻電動機、複巻電動機の3種類が存在します。また、交流電動機には誘導電動機(IM)と永久磁石同期電動機(PMSM)の2種類があります。
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