電車を駆動する主電動機の種類
主電動機とは、電車を走らせる駆動用モーターのことです。多くの場合、主電動機は台車枠に取り付けられ、減速機構を介して車輪を駆動します。
主電動機の種類は大まかに直流電動機と交流電動機に大別されますが、構造によりさらに分類すると多くの種類が存在します。本ページでは主電動機の種類や、それぞれの特性の違いについて説明します。
直流電動機と交流電動機
電車の主電動機の種類は、大きく分けると直流モーターと交流モーターに分類されます。それぞれの特徴や構成部品について見ていきましょう。
直流モーターの特徴と構造
直流モーターは、回転子コイルに流れる電流の向きをブラシとコミテータによって切り替えることで、一定の方向に回転しトルクを出力します。
単純に直流電源に接続するだけで回転し、印加する電圧を調整することで容易にトルク制御が可能であるため、主電動機として古くから用いられてきました。
構造上ブラシやコミテータが不可欠なので、摩耗するブラシの交換や摺動部品のメンテナンスに多くの手間がかかります。
交流モーターの特徴と構造
交流モーターは、交流電源に接続することで回転します。交流モーターの可変速制御を行うには交流電源の周波数や電圧を細かく調整する必要があり、パワーエレクトロニクス技術が未発達な時代では鉄道用主電動機としては不向きでした。
現在では、GTOやIGBTなどのパワー半導体を用いたVVVFインバータ装置を用いて、電力を必要な電圧・周波数に変換することで交流モーターを駆動するシステムが主流になっています。
鉄道用主電動機としては、かご型誘導電動機(IM)や永久磁石同期電動機(PMSM)が用いられます。いずれも固定子コイルに三相交流を入力することで回転磁界を発生させることで駆動し、回転子への機械的接点を介した電力供給は行いません。
そのためブラシやコミテータが不要で、直流電動機と比べてメンテナンスフリーな特徴があります。
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直流モーターの種類
主電動機に用いられる直流モーターは、界磁コイルと電機子コイルの構成の仕方によって、直巻モーター、分巻モーター、複巻モーターに分類されます。それぞれの特徴について示します。直流直巻モーター
直流直巻モーターは、電機子コイルと界磁コイルが直列に接続された構造です。電機子電流と界磁電流は等しくなるため、起動トルクが大きく加速とともにトルクが減少していく特性です。
直流分巻モーター
直流分巻モーターは、電機子コイルと界磁コイルが並列に接続された構造です。
単に電機子コイルと界磁コイルを並列接続した構成で電源に接続すると、負荷の大きさに関わらず界磁強度が安定します。したがって、工作機械のように負荷変動が大きく一定速度で回転する用途に適した特性を持ちます。
主電動機に分巻モーターを採用した鉄道車両の主回路では、電機子回路と界磁巻線回路にそれぞれスイッチング素子を設けて独立に調整することで、スイッチングパターン次第でモーターの出力特性をかなり自由に設定できるようになっています。
直流複巻モーター
直流複巻モーターは、界磁コイルに直巻コイルと分巻コイルの2種類を設けており、直巻モーターと分巻モーター双方の特長を持ちます。
起動トルクが大きくて加速に伴いトルクが減少する直巻特性を活かしつつ、分巻コイルの電流をスイッチングにより調整して界磁強度をコントロールすることで、弱め界磁制御や回生ブレーキを実現できます。
電機子チョッパ制御よりも安価に回生ブレーキを実現できる方式として、私鉄車両で多く採用された「界磁チョッパ制御」の車両に使われる主電動機が、この直流複巻モーターです。
交流モーターの種類
主電動機に用いられる交流モーターには、三相かご型誘導モーターと永久磁石同期モーター(PMSM)があります。それぞれの特徴について示します。三相かご型誘導モーター
三相かご型誘導モーターは、アルミなどの導体でかご型に構成した回転子に、固定子巻線が生じる回転磁界によって誘導電流を流すことで、ローレンツ力を生じさせ回転します。構造が単純で堅牢、安価といった特徴があります。
回転の原理上、回転子に電流を流す必要があるため2次銅損と呼ばれる損失が生じます。
永久磁石同期モーター
永久磁石同期モーターは、回転子に希土類の強力な永久磁石を設けられた構造で、固定子巻線が発生させる回転磁界と回転子側永久磁石との引力・斥力により回転します。
誘導電動機と比較すると、回転子に電流を流す必要がなく2次銅損が生じないため高効率化を実現できます。
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